ページネーション と 並べ替え のセクションにおいて 、エンド・ユーザが特定のページのデータを選んで表示し、いずれかのカラムによってデータを並べ替えることが出来るようにする方法を説明しました。 データのページネーションと並べ替えは非常によくあるタスクですから、Yii はこれをカプセル化した一連の データ・プロバイダ を提供しています。
データ・プロバイダは yii\data\DataProviderInterface を実装するクラスであり、主として、ページ分割され並べ替えられたデータの取得をサポートするものです。 通常は、データ・ウィジェット と共に使用して、 エンド・ユーザが対話的にデータのページネーションと並べ替えをすることが出来るようにします。
Yii のリリースには次のデータ・プロバイダのクラスが含まれています。
これら全てのデータ・プロバイダの使用方法は、次の共通のパターンを持っています。
// ページネーションと並べ替えのプロパティを構成してデータ・プロバイダを作成する
$provider = new XyzDataProvider([
'pagination' => [...],
'sort' => [...],
]);
// ページ分割されて並べ替えられたデータを取得する
$models = $provider->getModels();
// 現在のページにあるデータ・アイテムの数を取得する
$count = $provider->getCount();
// 全ページ分のデータ・アイテムの総数を取得する
$totalCount = $provider->getTotalCount();
データ・プロバイダのページネーションと並べ替えの振る舞いを指定するためには、その pagination
と sort のプロパティを構成します。
二つのプロパティは、それぞれ、yii\data\Pagination と yii\data\Sort の構成情報に対応します。
これらを false
に設定して、ページネーションや並べ替えの機能を無効にすることも出来ます。
データ・ウィジェット、例えば yii\grid\GridView は、dataProvider
という名前のプロパティを持っており、
これにデータ・プロバイダのインスタンスを受け取らせて、それが提供するデータを表示させることが出来ます。例えば、
echo yii\grid\GridView::widget([
'dataProvider' => $dataProvider,
]);
これらのデータ・プロバイダの主たる相異点は、データソースがどのように指定されるかという点にあります。 次に続く項において、各データ・プロバイダの詳細な使用方法を説明します。
yii\data\ActiveDataProvider を使用するためには、その query プロパティを構成しなければなりません。 これは、yii\db\Query または yii\db\ActiveQuery のオブジェクトを取ることが出来ます。 前者であれば、返されるデータは配列になります。後者であれば、返されるデータは配列または アクティブ・レコード インスタンスとすることが出来ます。例えば、
use yii\data\ActiveDataProvider;
$query = Post::find()->where(['status' => 1]);
$provider = new ActiveDataProvider([
'query' => $query,
'pagination' => [
'pageSize' => 10,
],
'sort' => [
'defaultOrder' => [
'created_at' => SORT_DESC,
'title' => SORT_ASC,
]
],
]);
// Post オブジェクトの配列を返す
$posts = $provider->getModels();
上記の例における $query
が次のコードによって作成される場合は、提供されるデータは生の配列になります。
use yii\db\Query;
$query = (new Query())->from('post')->where(['status' => 1]);
補足: クエリが既に
orderBy
句を指定しているものである場合、(sort
の構成を通して) エンド・ユーザによって与えられる並べ替えの指定は、 既存のorderBy
句に追加されます。一方、limit
とoffset
の句が存在している場合は、 (pagenation
の構成を通して) エンド・ユーザによって指定されるページネーションのリクエストによって上書きされます。
デフォルトでは、yii\data\ActiveDataProvider はデータベース接続として db
アプリケーション・コンポーネントを使用します。
yii\data\ActiveDataProvider::$db プロパティを構成すれば、別のデータベース接続を使用することが出来ます。
yii\data\SqlDataProvider は、生の SQL 文を使用して、必要なデータを取得します。
このデータ・プロバイダは、sort と pagination
の指定に基づいて、SQL 文の ORDER BY
と OFFSET/LIMIT
の句を修正し、
指定された順序に並べ替えられたデータを要求されたページの分だけ取得します。
yii\data\SqlDataProvider を使用するためには、sql プロパティだけでなく、 totalCount プロパティを指定しなければなりません。例えば、
use yii\data\SqlDataProvider;
$count = Yii::$app->db->createCommand('
SELECT COUNT(*) FROM post WHERE status=:status
', [':status' => 1])->queryScalar();
$provider = new SqlDataProvider([
'sql' => 'SELECT * FROM post WHERE status=:status',
'params' => [':status' => 1],
'totalCount' => $count,
'pagination' => [
'pageSize' => 10,
],
'sort' => [
'attributes' => [
'title',
'view_count',
'created_at',
],
],
]);
// データ行の配列を返す
$models = $provider->getModels();
情報: totalCount プロパティは、データにページネーションを適用しなければならない 場合にだけ要求されます。これは、sql によって指定される SQL 文は、 現在要求されているページのデータだけを返すように、データ・プロバイダによって修正されてしまうからです。 データ・プロバイダは、総ページ数を正しく計算するためには、データ・アイテムの総数を知る必要があります。
yii\data\ArrayDataProvider は、一つの大きな配列を扱う場合に最も適しています。 このデータ・プロバイダによって、一つまたは複数のカラムで並べ替えた配列データの 1 ページ分を返すことが出来ます。 yii\data\ArrayDataProvider を使用するためには、全体の大きな配列として allModels プロパティを指定しなければなりません。 この大きな配列の要素は、連想配列 (例えば DAO のクエリ結果) またはオブジェクト (例えば アクティブ・レコード インスタンス) とすることが出来ます。例えば、
use yii\data\ArrayDataProvider;
$data = [
['id' => 1, 'name' => 'name 1', ...],
['id' => 2, 'name' => 'name 2', ...],
...
['id' => 100, 'name' => 'name 100', ...],
];
$provider = new ArrayDataProvider([
'allModels' => $data,
'pagination' => [
'pageSize' => 10,
],
'sort' => [
'attributes' => ['id', 'name'],
],
]);
// 現在リクエストされているページの行を返す
$rows = $provider->getModels();
補足: アクティブ・データ・プロバイダ および SQL データ・プロバイダ と比較すると、 配列データ・プロバイダは効率の面では劣ります。何故なら、全ての データをメモリにロードしなければならないからです。
データ・プロバイダによって返されたデータ・アイテムを使用する場合、各データ・アイテムを一意のキーで 特定しなければならないことがよくあります。例えば、データ・アイテムが顧客情報を表す場合、顧客 ID を各顧客データのキーとして使用したいでしょう。データ・プロバイダは、yii\data\DataProviderInterface::getModels() によって返されたデータ・アイテムに対応するそのようなキーのリストを返すことが出来ます。例えば、
use yii\data\ActiveDataProvider;
$query = Post::find()->where(['status' => 1]);
$provider = new ActiveDataProvider([
'query' => $query,
]);
// Post オブジェクトの配列を返す
$posts = $provider->getModels();
// $post に対応するプライマリ・キーの値を返す
$ids = $provider->getKeys();
上記の例では、yii\data\ActiveDataProvider に対して yii\db\ActiveQuery オブジェクトを供給していますから、 キーとしてプライマリ・キーの値を返すのが理にかなっています。キーの値の計算方法を明示的に指定するために、 yii\data\ActiveDataProvider::$key にカラム名を設定したり、キーの値を計算するコーラブルを設定したりすることも出来ます。 例えば、
// "slug" カラムをキーの値として使用する
$provider = new ActiveDataProvider([
'query' => Post::find(),
'key' => 'slug',
]);
// md5(id) の結果をキーの値として使用する
$provider = new ActiveDataProvider([
'query' => Post::find(),
'key' => function ($model) {
return md5($model->id);
}
]);
あなた自身のカスタム・データ・プロバイダ・クラスを作成するためには、yii\data\DataProviderInterface を実装しなければなりません。 yii\data\BaseDataProvider を拡張するのが比較的簡単な方法です。そうすれば、データ・プロバイダのコアのロジックに集中することが出来ます。 具体的に言えば、実装する必要があるのは、主として次のメソッドです。
下記は、CSV ファイルを効率的に読み出すデータ・プロバイダのサンプルです。
<?php
use yii\data\BaseDataProvider;
class CsvDataProvider extends BaseDataProvider
{
/**
* @var string 読み出す CSV ファイルの名前
*/
public $filename;
/**
* @var string|callable キーカラムの名前またはそれを返すコーラブル
*/
public $key;
/**
* @var SplFileObject
*/
protected $fileObject; // ファイルの特定の行までシークするのに SplFileObject が非常に便利
/**
* {@inheritdoc}
*/
public function init()
{
parent::init();
// ファイルを開く
$this->fileObject = new SplFileObject($this->filename);
}
/**
* {@inheritdoc}
*/
protected function prepareModels()
{
$models = [];
$pagination = $this->getPagination();
if ($pagination === false) {
// ページネーションが無い場合、全ての行を読む
while (!$this->fileObject->eof()) {
$models[] = $this->fileObject->fgetcsv();
$this->fileObject->next();
}
} else {
// ページネーションがある場合、一つのページだけを読む
$pagination->totalCount = $this->getTotalCount();
$this->fileObject->seek($pagination->getOffset());
$limit = $pagination->getLimit();
for ($count = 0; $count < $limit; ++$count) {
$models[] = $this->fileObject->fgetcsv();
$this->fileObject->next();
}
}
return $models;
}
/**
* {@inheritdoc}
*/
protected function prepareKeys($models)
{
if ($this->key !== null) {
$keys = [];
foreach ($models as $model) {
if (is_string($this->key)) {
$keys[] = $model[$this->key];
} else {
$keys[] = call_user_func($this->key, $model);
}
}
return $keys;
} else {
return array_keys($models);
}
}
/**
* {@inheritdoc}
*/
protected function prepareTotalCount()
{
$count = 0;
while (!$this->fileObject->eof()) {
$this->fileObject->next();
++$count;
}
return $count;
}
}
データをフィルタリングする や 独立したフィルタ・フォーム で述べられているように、 アクティブ・データ・プロバイダの条件を手作業で構築することも可能ですが、 柔軟なフィルタ条件を必要とする場合には、Yii が持っているデータ・フィルタが非常に役に立ちます。 データ・フィルタは次のようにして使うことが出来ます。
$filter = new ActiveDataFilter([
'searchModel' => 'app\models\PostSearch'
]);
$filterCondition = null;
// どのようなソースからでもフィルタをロードすることが出来ます。
// 例えば、リクエスト・ボディの JSON からロードしたい場合は、
// 下記のように Yii::$app->request->getBodyParams() を使います。
if ($filter->load(\Yii::$app->request->get())) {
$filterCondition = $filter->build();
if ($filterCondition === false) {
// シリアライザがエラーを抽出するだろう
return $filter;
}
}
$query = Post::find();
if ($filterCondition !== null) {
$query->andWhere($filterCondition);
}
return new ActiveDataProvider([
'query' => $query,
]);
PostSearch
モデルは、どういうプロパティと値がフィルタリングに使用できるかを定義するという目的のために使用されています。
use yii\base\Model;
class PostSearch extends Model
{
public $id;
public $title;
public function rules()
{
return [
['id', 'integer'],
['title', 'string', 'min' => 2, 'max' => 200],
];
}
}
データ・フィルタは極めて柔軟で、どのようにして条件が構築されるか、また、どんな演算子が許容されるかをカスタマイズすることが可能です。 詳細は API リファレンスで yii\data\DataFilter を参照して下さい。
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